全国平均24,141円。この数字を、どう見るか。
厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃は月額24,141円でした。前年度の23,053円から着実に伸びており、報酬改定や各事業所の努力が数字に表れつつあります。
それでも、現場に立つ私たちは知っています。この金額が、利用者さんの「働いた実感」や「暮らしの支え」として十分と言えるかどうか。そして、平均を下回る事業所ほど「上げたいのに、上げられない」というもどかしさを抱えていることを。
私たちCKRグループは、広島県で15年以上、自社3事業所の運営と県内20事業所への軽作業委託を通じて工賃向上に取り組んできました。このコラムでは、その現場経験から見えてきた「工賃が上がらない構造」と「次の一手」を、連載でお伝えしていきます。
第1回のテーマは、そもそもの出発点。「なぜB型の工賃は上がりにくいのか」です。
理由①:軽作業には「単価の天井」がある
袋詰め、シール貼り、封入、検品。多くのB型事業所を支えてきた軽作業には、大切な役割があります。作業の手順が明確で、利用者さんの特性に合わせて分担しやすく、「できた」という達成感を積み重ねやすい。私たち自身、15年間この仕事に助けられてきました。
一方で、軽作業には構造的な限界があります。発注元の企業にとって軽作業は「コスト削減のための外注」であることが多く、1個あたり数十銭〜数円という単価から抜け出しにくいのです。どれだけ作業効率を上げても、単価そのものが低ければ、生産活動収入の伸びには天井があります。
工賃の原資は生産活動収入です。つまり、「がんばり」ではなく「単価」が工賃の上限を決めてしまう。ここが、多くの事業所がぶつかる最初の壁です。
理由②:「仕事を獲ってくる余力」がない
では、単価の高い仕事に切り替えればいい――理屈はそうですが、現実はそう簡単ではありません。
B型事業所の職員は、日々の支援で手一杯です。個別支援計画、送迎、記録、家族対応、行政手続き。そのうえで「営業に出て新規の仕事を獲得する」時間と人員を確保できる事業所は、ごくわずかではないでしょうか。
高単価の仕事は、待っていても向こうからは来ません。しかし営業に人を割けば、支援の質が下がる。この二律背反が、単独運営の事業所を軽作業に留めているのだと、私たちは考えています。
理由③:新しい作業を「教えられる人」がいない
3つ目の壁は、ノウハウと指導体制です。
たとえば動画のテロップ入れや文字起こし、画像制作といったPC作業は、軽作業より明らかに単価が高い領域です。それでも導入が進まないのは、「教えられる職員がいない」「何を揃えればいいか分からない」「品質を保証できる自信がない」から。
新しい分野への挑戦には、機材・マニュアル・指導・品質管理という4つの準備が必要で、これを一事業所がゼロから揃えるのは、正直かなりの負担です。
「単独で頑張る」から、「共に取り組む」へ
ここまでの3つの壁を並べてみると、共通点が見えてきます。それは、どれも「一事業所だけで解決しようとすると詰む」問題だということです。
- 単価の壁 → 高単価の仕事を、共同で受注できたら
- 営業の壁 → 案件の獲得と配分を、誰かが担ってくれたら
- ノウハウの壁 → マニュアルと指導を、共有できたら
実は、この発想こそが私たちが「就労共創ネットワーク」を立ち上げた理由です。B型事業所が単独で頑張る時代から、共に仕事をつくり、共に工賃を上げる時代へ。軽作業で培った15年の運営経験に、単価の高いPC作業を掛け合わせ、利用者さんの「できる」を広げていく。その仕組みづくりを、全国の仲間と一緒に進めています。
次回予告:軽作業とPC作業、単価はどれだけ違うのか
次回のコラムでは、「軽作業とPC作業の単価は実際どれくらい違うのか」を、具体的な作業内容とあわせて掘り下げます。テロップ入れ、文字起こし、SNS画像制作――利用者さんが本当に取り組めるのか、職員1人でも回せるのか。現場目線でお伝えします。
工賃向上の「次の一手」を探している事業所の方は、ぜひ続けてお読みください。個別のご相談(無料・オンライン)も随時受け付けています。
参考:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」(全国平均工賃月額 24,141円)。なお、令和5年度以降の平均工賃月額は算定方法の変更(分母を「一日あたりの平均利用者数」とする方式への見直し)の影響を含みます。
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